からは何の言

轍もないかを

2015年07月16日 16:34

前髪を掻き上げると、手すりから体を離して立ち去ろうとする。その後ろ姿に、由衣は縋りつくような目を向け、両手を重ねてそっと胸元に置いた。
「もしも怪盗ファントムがここに盗技術轉移みに入るのなら、ついでに、私も……盗んでもらえないかしら?」
 カツン――革靴を打ち鳴らして悠人の足が止まった。ゆっくりと振り返る。そして、にっこりと満面の笑みを浮かべると、その表情とは対照的な、ぞっとするほどの冷たい声で言う。
「あなたに名画ほどの価値があるとでも?」
 力が抜けたように由衣の腕が降りていく。半開きの唇葉も紡がれない。彼女は僅かに潤んだ目を細め、遠ざかる悠人の背中を、ただ寂しげnu skin 香港
にじっと見送るだけだった。

「楠サン、ちょっと」
「どうかしました? お嬢様」
 回廊の反対側から急いで大広間の前に戻り、仁王立ちで待ち構えていた澪は、悠人の腕を掴んで人通りのない通路に連れ込んだ。奥にある部屋はすべて物置か何かのようで、通り抜けることもできないため、パーティ時にわざわざここに来る人はいないだろう。
「師匠、あの態度はないんじゃないですか?」
「澪の方こそ、下手な覗き見は感心しないな」
 両手を腰に当てて咎め通渠る澪に、悠人は悪びれることなく反撃する。どうやら澪が見ていたことは知っていたらしい。知っていてあんなことを言うなんて――澪はいっそう表情を険しくすると、眉間に縦皺を刻みながら、下から覗き込むようにして悠人を睨んだ。
「ねえ、由衣さんって師匠の元カノ?」
「よくわかったね」
 悠人はにこやかな笑顔を保ったまま答える。その余裕の態度が、澪にはなおさら腹立たしく