轍もないかを

轍もないかを

に飛び込み息

に飛び込み息

 そんなことがあった日から幾日が過ぎたであろうか、耕太を死に至らしめた四人の中の一人が高熱を発して倒れた。タマに足首を噛まれた男だった。医者に診せたが原因不明で、熱を下げるために対症薬として葛根湯を置いて医者は帰って行った。男は、高熱のためか、「猫、猫」と譫言(うわ管理培訓ごと)のように言っていたが、食べ物が喉を通らず、水さえも恐がって飲まないことから、脱水症状に陥り息を引き取った。
 村の者たちが、死んだ独身男の家を片付けていると、行李の底から大金が出てきた。村の者たちは顔色を変えてお互いを見つめ合った。金を盗んでいたのは耕太ではなく、この男であったと気付いたのだ。 
 男たちは金を分配し、自分たちの過ちを秘密にしようと誓いあった。
   「このことは誰にも言わないように」
 特に庄屋には絶対に知られてはならないと、きつく約束を交わした。 
 
 その後も、立て続けに一人、また一人と死に、庄屋を残して四人の男が原因不明の死を遂げた。
 さすがの庄屋も気がついた。
   「これは耕太の祟りに違いない」
 更に、耕太が飼っていた老猫に辿り着くまでには、然程の刻は要しなかった。
   「耕太は恐らく無実だったのだ、その耕太を殺した村人への猫の復讐に違いない」
 庄屋は、耕太殺しには加わっていないが、疑ったのは確かである。
   「最後は儂か」
 覚悟をきめ、せめて最後に耕太を弔ってやろうと伴を連れて耕太の家にやってきた。
 耕太の亡骸は、門口で腐敗し、半ば白骨化した部分もあった。
   「耕太、すまなかった、許してくれ」
 庄屋は涙を流して詫びた。村人に命じて墓穴を掘らせ、亡骸を埋めようとしたとき、耕太の亡骸を護っていたのであろうタマが、ふらふらと歩いてきて、墓穴絶えた。

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