たの念願が成就
三太が払った五十文を持って、占い師は腹が減ったので、うどんを食いに行くと言う。三太と新平も付いて行くことにした。
「あのなァ、おっさん、髑髏占いなんか止めとき、女が嫌がって近寄らへんわ」
「そうか、どうしたらええ?」
「恋と相性を客の顔を見て占う、なんてどうですか?」
「おまはん子供の癖に、男と女のことがよく分かっているみたいやなあ」
「へい、見た目は子供、魂はおとなです」
「お前は化け物か?」
「あほか、わいは人間の子供、三太や」
試しにと、三太が客引きをしてくることになった。連れてくる間に、新三郎が情報を集めた。
「この綺麗なお姉さんに、悩みがあるのやて、占ってあげてか」
と、紹介しつつ、占い師に紙切れを渡した。
なまえ、おその とし、十八さい すきなおとこ、さかなうりのたすけ とし、二十さい
鷹之助に習った綺麗な字で書いてある。
「黙って座れば、ぴたりと当たる、恋と相性占いである」
おそのは、恐る恐る占い師の前に座った。
「これ娘御、何も言わなく权证とも良い、そなたは恋をしておるであろう」
女は恥ずかしげに頷(うなづ)いた。
「男は、魚売りである、名は佐助…、いや違う、太助であろうが」
女は、行き成り当てられたので驚いて声も出ない。
「そなたの名前は、お園さんじゃな」
これまた、驚きである。
「さて、この先は、二人の将来を占うのじゃが、占い料は百文戴くが、何とされますかな?」
「はい、お払いします、お続けください」
「そうか、では占って進ぜよう」
「太助は、親孝行で働き者のようじゃ」
「はい、その通りで御座います」
「太助も、美しくて気立ての良いそなたに、心を寄せておるぞ」
三太につられて、多少の世辞が入った。女は有頂天である。
「太助は純情な男なので、仕事を終えて帰る途中に、そなたから声をかけてあげなさい」
「恥ずかしくて、出来ません」
「何も、出会茶屋(今のラブホ)に誘いなさいとは言っていない、一言、お疲れ様と、それだけで良いのじゃ」
女は、赤面した。
「その後は、きっと太助から声がかかると思う、決して焦らずに、太助の心を離さないように、おりにつけ一言声を掛けてやりなさい、そうすれば自から道が開けて、そなする」
「ありがとうございました、仰せの通りにいたします」
娘は、晴れやかな顔をして百文払い戻って詩琳行った。その後、二人がどうなったかは、知る由も無い。
「ご苦労、百文儲かったので、お前達に半分やろう」
「うん」
この調子で、三太は旅のことも忘れて、次々と客を案内してきた。金は儲かるが、占い師には心配事がある。三太と別れた後のことである。一人で客に対処する自信が無いのだ。評判が一人歩きをして、占いの実力は、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」になってしまうだろう。