轍もないかを

轍もないかを

数の監視カ


すら駒だと聞くと、相手がいかに途轍もないかを思い知らされ、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。それでも手を引くつもりはない。何の罪もない幼い少女が実験体として攫われているのだから。
「橘大地の取り調べを許可願います」
「……良かろう」
 楠長官が断らないだろうことはわかっていた。たとえ誠一から申し出なかったとしても、いずれ楠長官の方から命じられたに違いない。状況が大きく変わった今、橘美咲を手に入れるための新たな情報を、少しでも大地から引き出すために——。

「やあ、南野君、どうしたんだ?」
 アクリル板の向こうで、橘大地がニコニコと人懐こく微笑んだ。
 仕切られた両側にはそれぞれ警備担当がひとりずつ配置され、複メラがアクリル板を挟む二人を捉えている。もちろん音声も録音されているだろう。しかし、橘側の情報の大部分が知られしまった今、隠さなければならないことはそれほど多くない。
「きのう、澪さんが無事に戻ってきました」
「それにしては浮かない顔をしているね」
 感情を表に出さないよう細心の注意を払ったつもりなのに、彼には簡単に見抜かれてしまった。それでもあえて素知らぬ顔で受け流すと、当初の予定どおり淡々と話を進めていく。
「橘美咲さんの居場所もわかりました」
「ほう?」
「橘会長が先方と面会の約束を取り付け、澪さんが行ってきました。澪さんは帰ってくるように訴えたらしいですが、残念ながら美咲さんは首を縦に振らなかったようです」
「だろうね」
 大地はクスッと笑って相槌を打つだけで、美咲がどこにいたのか尋ねようとしなかった。今までの口ぶりから考えても知っていた

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